2025年度 酒文化研修旅行


研修旅行の目的

Kura Master酒⽂化研修旅⾏は、フランス⼈審査員達が公平そして公正に審査が⾏えるよう⽇本酒や本格焼酎・泡盛について正しく学ぶこと、そして審査の精度をより⼀層⾼めていくことを⽬的として実施しています。

研修では、受賞蔵などを訪問して酒造りを学んだり、その地域の歴史や⽇本の⾷⽂化に造詣を深めるほか、セミナーなどの場では多くの飲⾷関係者、各県や団体の関係者、また⼀般の⽅々と交流を深めます。訪問先では、フランスの蒸留酒業界の感性、感度を伝えていきます。

また、フランスにおいて影響⼒、発信⼒の強いソムリエやバーテンダーたちが、研修で得た経験や学習を元に⾃ら正しく情報を伝えていくことも⼤切な任務です。

この研修がフランスでの⽇本酒と本格焼酎・泡盛の啓蒙の⼀助となることを願っております。

Kura Master運営委員会

2025 スケジュール

今年で第7回⽬となるKura Master酒⽂化研修旅⾏2025は、1⽉18⽇から27⽇までの10⽇間の⽇程で⾏われました。

1⽉18⽇(土)⿅児島県 (奄美) 弥生焼酎醸造所
1⽉19⽇(日)⿅児島県 (奄美) 奄美大島酒造
【文化体験】奄美きょら海工房
西原酒造
富田酒造
1⽉20⽇(月)熊本県 河内源一郎商店
きりしま高原麦酒
大和一酒造元
1⽉21⽇(火)熊本県・福岡県 【文化体験】南陵高校
高田酒造場
【文化観光体験】小倉城
1⽉22⽇(水)長崎県 (壱岐) 壱岐の蔵酒造
山の守酒造場
玄海酒造
2社合同試飲会 (山の守酒造場&玄海酒造)
1⽉23日(木)長崎県 (壱岐) 重家酒造
大麦生産団地見学
【文化観光体験】一支国博物館
猿川伊豆酒造
壱岐の華
天の川酒造
4社合同試飲会
Kura Master セミナー
1⽉24日(金)岡山県 宮下酒造
1⽉25日(土)岡山県 菊池酒造
丸本酒造
1⽉26日(日)岡山県 辻本店
白菊酒造
1⽉27日(月)岡山県 利守酒造
【文化体験】夢幻庵
【文化体験】川島一城日本刀鍛錬
Day 1
1⽉18⽇(土)

⿅児島県奄美にて①

弥生焼酎醸造所

羽田空港で乗り継いで、いよいよ鹿児島県奄美市に到着しました。時差ボケする間もなく、すぐに研修訪問が始まります。
奄美に到着すると九州経済産業局の皆様、焼酎プロデューサーの黒瀬暢子さんに歓迎を受けました。
移動中のバスでは九州経済産業局の安藤さんや鹿児島児島酒造組合 専務理事 田中完さんによる鹿児島県の紹介や鹿児島県での焼酎造りなどについてレクチャーが行われました。

今回の研修旅行初めは弥生焼酎醸造所の訪問から。1922年に女性が創業したこの家族経営の蔵では味濃く香り高い焼酎を100年以上作り続けています。
特徴は黒糖を島違いで3種を使い分けているところ、そして米麹をきちんと作ることに注力しています。

弥生焼酎醸造所に到着すると、九州経済産業局、国税局、地方新聞社の取材の方々に歓迎を受け、川崎洋之社長にご案内いただきました。

製麹について、一次仕込み、二次仕込み、黒糖のお話や奄美黒糖焼酎の歴史について学びました。

弥生焼酎醸造所では600㎏のドラム式製麴機を使用しています。
このドラム式製麹機で洗米、浸水(吸水率20~25%)、蒸きょう、麹の種付けを行います。審査員たちは、米麹にはタイ米を使用する理由や麹の色の違いなどについて詳しく質問をしていました。

一次仕込み用の和甕を見学。150kgずつ、4つの甕に分けて仕込みます。
甕の容量、なぜ地中に埋められているのか、酵母について、発酵温度など審査員たちから様々な質問が飛び交いました。
朝晩一日2回行うという櫂入れの作業についてもとても興味深くお話を聞き、実際に体験をしました。

続いて、いよいよ黒糖を投入する行程。黒糖の風味を損なわないようにゆっくり蒸気で溶かして米麹:黒糖の割合を1:2ににしてもろみに投入します。それから12日間発酵が続きます。発酵温度は一次仕込みとあまり変わりませんが、33度ほどで進みます。ここでは大きな泡がブクブクと立ったタンクとそうでないタンクがあり、この違いなどを質問しました。
仕込みに使われる水についても質問が出ます。水は奄美の水道水、割水はその水道水を活性炭でフィルターがけしたもということなど細かな話をしていました。

蒸留についても学ぶことができました。目前のポットスチルを見ながら、皆がとても興味深く話を聞いていました。

味わいに関する点で、フーゼル油のお話も伺いました。特製布を使ったお玉で、雑味の元となってしまうフーゼル油を丁寧に取り除く作業が行われています。​

施設の視察後は焼酎を試飲し、香りや味を確かめました。
テイスティングは原料のサトウキビに焦点を当てたラインナップになっていました。焼酎と合わせてそれぞれの商品に使用されている黒糖を実際に味わうことにより、よりテロワールの違いを認識することができました。
奄美大島産の黒糖を使用した焼酎は、ほぼ奄美大島では流通しておらず、黒糖生産に補助金が出る沖縄の島々から仕入れることが多いことを学びました。奄美では砂糖の状態にしなければ補助金が出ないため、原価が高価になってしまうため、焼酎造りには使いづらいのです。弥生焼酎醸造所では風土の違う沖縄の島々の黒糖を使い、それぞれの個性を活かす焼酎を作っています。
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【テイスティングアイテム】

弥生 波照間島
弥生 多良間島
弥生 与那国島
弥生
弥生ゴールド

弥生焼酎醸造所訪問の様子が奄美新聞と南海日日新聞に掲載されました。

弥生焼酎醸造所 Kura Master コンクール受賞酒

  • 弥生
    2021年度 黒糖焼酎部門 プラチナ賞
  • 弥生ゴールド
    2024年度 本格焼酎・泡盛コンクール 審査員賞
    2024年度 黒糖部門 プラチナ賞

奄美最初の夜は鹿児島県主催懇親会。蔵元の皆様の歓迎を受け、島唄をご披露いただきました。美味しいお食事を堪能し、ご用意いただいた黒糖焼酎各種をソーダ割りや水割り、オンザロックなどそれぞれの個性にあった工夫をしながら飲み比べをしました。
奄美の食事、黒糖焼酎を楽しみながら大島紬のお話や島唄、伝統的な楽器に触れ、審査員たちも長旅の疲れも忘れ、すっかり奄美大島のとりこになったようでした。

Day 2
1⽉19⽇(日)

⿅児島県奄美にて②

奄美大島酒造

研修旅行2日目の今日は龍郷町にある1970年創業の奄美大島酒造を訪問しました。創業当初は名瀬市に蔵がありましたが、1957年に奄美一美味しいと言われる“じょうごの水”を求めて移転しました。
奄美北部という位置、じょうごの水に関する、焼酎造りにおける水の話、また奄美大島産の黒糖のみを使用した焼酎造りのお話などを期待しています。
この蔵では貯蔵にバラエティに富んだ容器をしようしており、容器による熟成の違いや、通常は蒸気で溶かして使用する黒糖を固形のまま使用する固形仕込みなどユニークな点も興味深い訪問となりそうです。

製造兼営業の水間貴浩さんと杜氏の安原淳一郎さんにご案内いただきました。

奄美大島の黒糖へのこだわり、タイ米を使用する理由、半麹、じょうごの水について学びました。

まず最初に奄美大島産の黒糖の新糖を溶かしている作業を見学しました。施設に足を踏み入れた途端、ふわっと甘い香りに包まれます。実際に黒糖を蒸気で溶かしている場面で温度や量について奄美大島産の黒糖にこだわり続ける狙いなど興味深く質問が出ていました。

麹米にはタイ米を使いますが、タイ米は固いので2回蒸しをして水分を芯まで入れます。全麹を作った後、半麹を二次仕込みに使います。奄美大島では昔からこの方法で醸造されていましたが現在は半麹を使う蔵は少なくなっているそうです。

黒糖は通常溶かしてから二次仕込みに使用するのですが、こちらの蔵では固形のまま仕込む固形仕込みもしています。黒糖を溶かす際、熱を加えるとどうしても香りが飛んでしまうのですが、固形仕込みだともろみの熱で黒糖が解けるため全てのうまみや風味を液体に溶け込ませることができるのだそうです。しかし、固形仕込みだけで焼酎を作り、熟成をさせると辛みが出てしまうため、固形仕込みと液体仕込みの物をブレンドさせて商品にさせるそうです。
審査員たちは実際にタンクに黒糖の塊を割りながら入れていく作業をしました。

仕込みに使われてるじょうごの水は軟水。工場から2キロ離れたところの地下水を汲み上げて使っています。奄美と徳之島は大陸から分離した古い島なので、深い森があるので軟水になるそうです。

固形仕込みの熟成中の浜千鳥2年と7年熟成のものを直接甕から注いでいただいてテイスティングをしました。
熟成用の樽庫は圧巻でした。樽について(どこの樽か、木の種類、新樽使用についてなど)、活発な意見交換がなされました。

【テイスティングアイテム】
じょうご
高倉
浜千鳥の詩 長期熟成原酒
あまみ梅酒

Kura Master受賞作の賞状を持って記念撮影

奄美大島酒造  Kura Master コンクール受賞酒

昼食は奄美のおもてなし料理、鶏飯をいただきました。

奄美きょら海工房

続いては黒糖製造見学のため、奄美きょら海工房を訪問しました。この研修旅行は、焼酎への理解を深めるのはもちろん、その原料について学ぶことも重要だと考えています。
収穫時期は冬。ウギハギという特殊なカマで切ったり皮を剥いだりします。
収穫したばかりの新鮮なさとうきびをカットし、次に、さとうきびを絞ると、爽やかなレモン色のさとうきびジュースが出来上がります。サトウキビは下の部分が1番甘く、上に行くほど新しい部分なので糖度が低いのだそうです。
サトウキビを切ったり、絞って絞り汁を実際に飲ませていただきました。

果汁は甘さとほんの少しの酸味が絶妙で、まるで自然の恵みをそのまま味わっているような感じです。そして、この果汁がどのようにして濃厚な黒糖に変わるのかという工程を見学しました。

しぼり汁を丁寧に何度もかき混ぜて煮詰めていくと、レモン色だった汁が次第に黒茶色に変わっていきます。出来上がったばかりの黒糖は、普段食べるものとは異なり、まろやかで軽やかな甘さが特徴です。時間が経つにつれて、その濃厚さが増していくそうです。黒糖1キロに対して砂糖キビ10キロが必要だそうです。

また、黒糖を焼酎に変える際には、固形の黒糖を溶かして使うというルールがあり、そのために食用石灰を加えて煮詰める工程が必要です。

その後、絞り汁を黒糖にするために温めているところ、出来立ての温かい黒糖を実際にかじってみたりととても貴重な体験をしました。

審査員からも、絶えずかき混ぜるのはなぜか、温度は?時間は?食用石灰はどこで作られたもの?どのタイミングで加えるの?など、好奇心溢れる質問が飛び交いました。

目の前広がる海の美しさ、自然の豊かさに感動しました。

西平酒造

続いては1927年創業、間もなく100周年を迎えようとしている西平酒造を訪ねます。
沖縄で泡盛を製造していた西平家が喜界島に渡り創業。1945年に戦争で全壊し、奄美市名瀬に移転しました。
2021年から4代目に代替わりし、ミュージシャンの西平せれなさんが醸す蔵としてメディアにも多く取り上げられています。
この蔵の特徴は音響熟成。音楽を聞かせて熟成させるという話は時々耳にしますが、ジャンルによって熟成がどう変わるか実験しつつ、商品化を目指している点がとても個性的です。新しいことにどんどん挑戦している西平酒造の訪問です。

黒糖焼酎の魅力に憑りつかれて奄美に移住したというオーストラリア出身のジョンさんによる英語でのご案内でした。

半麹仕込み、全甕仕込み、ソニックエイジング

西平酒造のこだわりの一つは、奄美大島で数少ない蔵元だけが行っている半麹仕込み。タイ米ではなく、日本米を使用することで、米の甘みが引き出され、黒糖の香りが加わり、他では味わえない深みのある風味が楽しめます。

麹づくりに使用される三角棚は日本酒作りには一般的ですが焼酎には珍しいそう。400kgの米をドラム製麹機で洗米、浸漬、蒸し、種キリをし、その後三角棚で24時間。合計40時間かけて製麹をします。
一麹、二酛、三造りと言われるように最も重要な麹造り。母の味、というように昔は麹づくりは女性が担っていたことなど、外国人ならではの目線での説明も興味深かったです。
全甕仕込みで使われる甕、蒸留器などを見学したのち、樽貯蔵庫へ。

こちらにはスポットライトが灯り、ここはミュージシャンである西平さん一家が演奏する場所でもあります。熟成用の樽にはオークの他ミズナラや桜の木を使ったものもあります。
そして、いよいよカーヴへ。樽の一つ一つにスピーカーが設置されていて、それぞれにジャンルの異なる音楽を聞かせて熟成させる、ソニックエイジング。酒と音楽の距離が大切。それぞれの樽にハウス、レゲエ、島唄、ロック、ヒップホップなど様々な音楽を聴かせながら熟成させることで、どのように味わいが変化するのかという珍しい試みです。

【テイスティングアイテム】
ISLAND
加那ブラック
珊瑚
ソニックエイジング(レゲエ)未発売
ましゅ 50年熟成(日本で一番古い焼酎)

富田酒造場

富田酒造場続いては1951年創業、富田酒造場を見学します。
1951年11月1日、奄美がアメリカ占領下に名瀬の蘭舘山の麓で創業以来、大甕(540L)で昔ながらの仕込み方法で造りをしている蔵です。
全量甕仕込みをするのははなぜ?熟成の年月の違いでどのような酒質の差が出るのか?
また、黒麹のみを用いていることも特筆すべきで、なぜ黒麹に重きを置くのかという点にも注目します。

富田真行さんと弟さん、兄弟で焼酎造りをしています。

年間通しての焼酎づくり、和甕へのこだわり、蔵付き酵母

徳之島が富田家のルーツということで、1割は徳之島の黒糖を使っています。その他は沖縄の黒糖を使用。

米麹には全て鹿児島県産のうるち米を使っています。もともとタイ米を使用するのが伝統ですが先代が他との差別化のために日本米を使い始めたそうです。軽い酒質が多い奄美で、どっしりした飲みごたえのある焼酎を作りたいということも理由です。うるち米を使うことによってよりパラフルな味わいにります。

蔵の中に入るとたくさんの500ℓの和甕がありました。1951年創業以来使用している和甕は、補修を繰り返しながら使っています。現在は日本国内でこのサイズの和甕を作っている人はほとんどいないそうです。

仕込みには水、米麹、そして酵母を使用しますが富田酒造では蔵付き酵母で発酵させます。醸し方はまさにナチュールの極限。寒い時期は温度のコントロールはせず、夏は冷たい水をボトルに入れて甕に入れることで温度を下げています。

力強い味わいの焼酎にするため、麹には黒麹を使うことを重視しています。
発酵が始まらないこともあり、その場合はさしもと(すでに発酵しているものをとっておいて発酵してないものに足すこと)を施します。
蔵つき酵母なのでゆっくり発酵し、じんわりした味わいの焼酎になります。

また、年間を通して造りをすることによって腐敗しにくくなります。毎月違う沖縄県産黒糖を使用しますが、その味わいの違いは醸造の時点で味を整えることによって調整していますが、自然なつくりをしているので味わいに違いが出るのは当たり前、という考え方です。

二次仕込みの時は普通タンクに移すのですが、こちらはずっと甕のままの「どんぶり仕込み」をします。ステンレスに移す時の刺激が発酵を促すこともありますが、甕に入れたまま進めることによってゆっくり発酵が進みます。

蒸留に関しては全て常圧蒸留です。蒸留器の渡り部分の前のストレートのところに保温材を巻き、結露の戻りを少なくすることで軽い酒質にしています。
蒸留は2つの甕で、一回分。甕が全部で32個あるので16回蒸留し、一つのタンクに溜まっていきます。

【テイスティングアイテム】

竜宮
らんかん42度 原酒
まんらん舟 原酒
琥珀
まーらん舟の黒麹版
とまとリキュール
れもんリキュール

夜の懇親会では、奄美黒糖焼酎が勢ぞろい。たくさんの蔵元さんと交流をすることができました。また、各蔵元さんが持ち寄った焼酎についての説明を聞き、それぞれの味わいを比較しながら奄美の名物との食事の時間を楽しみました。

Day 3
1⽉20⽇(月)

⿅児島県霧島にて

河内源一郎商店

きりしま高原麦酒

今日は奄美から鹿児島県霧島まで移動します。
研修旅行3日目の今日は河内源一郎商店の訪問からスタート。
河内源一郎は大正時代を中心に活躍。焼酎に最も適した麹を発見し第一次焼酎ブームを巻き起こした、河内菌白麹の発見者で、麹の神様と言われています。
焼酎造りの要とも言える麹についてたっぷり学習することができました。
河内源一郎氏の3代目が跡を継ぐ焼酎メーカー、1954年創業のきりしま高原麦酒では焼酎の他、発泡酒やクラフトビールも製造、関連会社では焼酎用種麹の販売や研究も行っています。

焼酎に適した麹の発見、黒麹、白麹の歴史
まずはパワーポイントを使って麹に関する学習をしました。
元々焼酎は日本酒同様、黄麹で作られていましたが、温暖な場所での製造には腐敗がつきまとい、向いていないということがわかりました。泡盛に使われている黒麹はありましたが、焼酎づくりに適した麹を河内源一郎が発見しました。

黄麹は炭水化物を糖化するのに向いており、黒(白)麹はクエン酸を作るので腐敗しやすい温暖な地域での焼酎づくりに適しているのです。また、甘味より旨味を作るのが得意です。
焼酎だけでなく、例えば麹を豚に食べさせると成長が早くなり、臭いが少なくなり、鶏に食べさせるとの卵も大きく硬い殻になることがわかっています。また、人の健康にも良い効果があることがわかっています。

博物館部分の見学時にも、更に麹の歴史、河内源一郎と黒瀬杜氏との関係など興味深いお話を伺いました。

その後、焼酎に使われる原料の芋を試食し、白麹、黒麹、黄麹を比較し、味を比べてみました。黄麹が黄色ではなく、黄緑色をしていることなど発見がありました。


フランス人にはなじみの少ない麹。
審査員からもたくさん質問が飛び出します。黒麹と白麹を混ぜて醸造できるのか、二つの麹の違いについて、など。
黒麹は少しカビ臭がするのですが、それはエステルの違いからくるそうです。
また、黒麹と黄麹は成長が早く、白麹は少し遅いため混ぜて使うと黒と黄麹が進んでしまうので、完成した焼酎を混ぜることはあっても麹を混ぜて作ることはないそうです。また、3段仕込みの段階で段ごとに麹を変えることはできるとのこと。

テイスティングでは麹の違いの他、ナツメヤシを使った商品も。

【テイスティングアイテム】
河内源一郎R5
薩摩自顕流
一葉の恋日記
聖樹杯

きりしま高原麦酒  Kura Master コンクール受賞酒

熊本県 GI球磨

バスで九州を北上、午後は熊本の球磨焼酎の見学です。
人吉球磨地方では約500年前の室町時代から焼酎造りが行われてきました。藩主相良氏は当時東南アジアや大陸と活発に交易をしており、蒸留技術が持ち込まれたことが焼酎造りのきっかけになったのではないかと言われています。昔は日本酒、焼酎ともに活発に作られていました。

大和一酒造元

1952年創業の大和一酒造元は2020年の熊本豪雨によって壊滅的被害を受けました。大切にしてきた球磨焼酎の歴史、つくり、また明治時代に作られた麹室(歴史文化財)、かぶと釜の仕組みなどをはじめ、温泉水で仕込む焼酎や玄米、牛乳などユニークな焼酎を作ることでも知られています。日本の伝統的な製法を守りつつ、現代的な技術を取り入れた製品作りを行っています。地域に密着し、土地の特色を活かした酒造りが特徴です。

水害からの復興と対策、昔の焼酎造りの再現、そして球磨焼酎への思い。

下田文仁社長による座学では2020年7月4日の熊本豪雨での3m浸水した蔵の被害状況やそれに伴う復興の様子などについてビデオを通して説明を受けました。貯蔵していた酒の80%を焼失、どのように復活したらいいのかという絶望的な思いでしたが、水によって流れてきた菜の花の種のおかげであちこちに咲いた菜の花を見て前向きな気持ちになれたそうです。

球磨川、川辺川は毎年きれいな川として選ばれるほど水質が良いことで知られています。2020年の水害によって蔵付き酵母が流されてしまったけれど、また新しい酵母が流されてきて住み着いたのでは?と考えているそうです。その考えから、自然の物だけで焼酎を作ってみようという試みにつながり、球磨川という商品の開発に至りました。
麹、蒸留やGI球磨に関する座学の後、施設を見学しました。

水害対策として甕に取り付けられた紐は、いざという時に甕を吊り上げて浸水しないように考慮されています。
麹室は明治時代に栗の木で作られたものでしたが水害後は檜で再生されました。歴史文化財に指定されています。麹室の壁に断熱材として以前はもみ殻が使用されていたことや温度、湿度、製麹中の温度変化などについて審査員から熱心に質問がありました。麹室の湿度は、蒸したお米から出る水蒸気で自然に保っています。
黒麹は同じ室で作ると麹の胞子が舞ってしまうため、部屋も体も真っ黒になってしまうので現在は黒麹は使用していないそうです。大和一酒造元の焼酎は珍しい黄麹と白麹で作られています。

昔の焼酎造りの再現にこだわり、黄麹の使用、熊本酵母と蔵つき酵母の使用、鉄製蒸留器、かぶと窯蒸留器の使用や玄米焼酎、牛乳焼酎そして温泉焼酎などユニークな商品の開発をしています。
かぶと釜は鹿児島にもありますが、液体と個体を分けるのは球磨焼酎ならでは。かぶと窯で蒸留した焼酎の原酒は45%、通常の蒸留に比べて高いアルコール度数になります。本格焼酎のアルコール度数の上限はここからきたのだと言われています。
仕込み水と割り水に使用する温泉水は醸造所の中に湧き出していて、その温泉水も味わいました。痛風、便秘などにも効能があるそうで、少しでも身体にいいようにと温泉で仕込むことにしたそうです。

【テイスティングアイテム】
球磨川
明治波濤歌
牧場の夢 原酒
牧場の夢 25度
温泉焼酎

伝統的な「がらちょく」で燗にしていただいて飲み比べもしました。

大和一酒造元  Kura Master コンクール受賞酒

本日の訪問はこれで終了。この後は球磨焼酎の蔵元さんたちと和やかな懇親会を行い
ました。
立食形式のスタイルで、それぞれの蔵元さんが持ち寄ってくださった焼酎をいただきながら有意義な意見交換ができました。

Day 4
1⽉21⽇(火)

熊本県 GI球磨②

人吉温泉のお宿でゆっくり温泉を体験。朝起きると視界がまっしろなほどのあさぎりに包まれていました。

南陵高校

本日最初の訪問は熊本県球磨郡あさぎり町にある熊本県立南稜高校です。2005年4月から「醸造」という科目が新設された高校で農業土木科と食品化学科を訪ねます。

農業土木科の生徒さんたちが2020年球磨川の洪水を機に考案された田んぼダムの仕組みについて説明してくれました。この水害の際、土が乾燥していたことにより水がしみ込みにくくなっていて氾濫の要因の一つとなってしまったのでは、と考えられています。
田んぼダムとは、水田を使いながら洪水の時には田んぼに水を貯める仕組みで、米を作りながら水害にも備えることが可能です。田んぼに堰板を作ることにより水を貯め、市街地に流れ込むのを防ぎます。これにより、避難するための時間が稼げるのです。圃場ごとに150トンの貯水効果があるそうです。
田んぼを深く掘ることはできるのか、どのくらいの避難時間を稼げるのか、など、前日に大和一酒造元で聞いた水害の話をもとに審査員からも質問が飛び出しました。

続いては食品化学科にお邪魔しました。まずは宮川さんから生徒さんに向け、フランスの気候の話や海外では香りが大事だということ、2017年にKura Masterを立ち上げた目的などをお話ししました。

先生や生徒さんからのプレゼンでは、醸造の説明、球磨焼酎の概要と歴史などについてパワーポイントを用いた説明をしていただきました。
球磨焼酎酒造組合が全面的にバックアップして、ここで造られる焼酎は全て本物になります。また、ここの特色は米も自分たちで生産したものを使用している「純南陵高校産」の焼酎であること。将来的には更に研究が進められるように東京農業大学との連携を行うことも想定しているそうです。高校で基礎を学び、大学で技術と人脈を発展させ、大いに刺激を受けてさらに美味しくなった球磨焼酎が登場するのもそれほど遠い未来の話ではないようです。

高田酒造場

午後は創業1902年の高田酒造場を訪れました。
盆地のため冬は寒く夏は暑い、そして冬には深い霧が発生するのが人吉球磨地区の特徴で、「あさぎりの花」と名付けられた焼酎が印象的な蔵元です。
高田酒造場では特になでしこ酵母を使用している点、自家水田の山田錦の栽培、石づくりの麹室、貯蔵室とクラフトジンやラムの製造などを手掛けている点などに注目です。

自社栽培から一貫した焼酎づくりと花酵母の使用。熟成の可能性について学びました。

高田恭奈専務の案内でまずは山田錦の自社田を見学し、田んぼの年間の流れを学ぶことができました。
フランスで、葡萄を育ててワインを醸造している生産者を見慣れている審査員たちも自家栽培という点に興味深々な様子でした。
高田酒造場での栽培はまずJAで種から苗を育ててもらい、その後ある程度まで成長させてくれる農家に委託しています。その後、年によって若干異なりますが、6月以降に田植えをします。その後、7月後半から8月頃に根を張らせるために水を抜くそうです。山田錦は高さがあるので根を張らせる必要があります。そのため、わざと水を抜くことにより根を深くまで伸ばすようにするのです。8月後半から9月にかけて開花、10月後半に稲刈りをします。
審査員からは、米の選別はどのようにするのか、精米は委託なのか、山田錦を選ぶ理由、肥料や害虫などについての質問がありました。

山田錦を選ぶ理由としては綺麗な酒質、香りを作りたいという酒質に合うのが山田錦だからだそうです。また、害虫についての質問もあり、米につく害虫やジャンボタニシもいて稲を食べてしまい、土が乾燥してても死なないため手で取っていると説明がありました。
肥料に関しては牛の肥料や一部化学肥料を使います。蒸留で出たカスは田んぼには撒かず、家畜の餌にされます。
見学した田んぼの土は粘土質ですが川の向こうは鉄分を含むことなど、テロワールの違いのお話も興味深く聞くことができました。

続いて蔵の見学です。
高田酒造場では甕での仕込みが中心です。一次仕込みは1週間ほど。それから二次仕込み、五次仕込みまで麹のみで行うそうです。五次仕込みまで行うのは香りを最大限に引き出すため。特にあさぎりの花は6週間ほどかけて仕込みます。発酵時は酵母の量を変えずに温度を変えて低温で発酵させることで長期の仕込みをします。
野生の花から分離培養したなでしこ酵母を使って醸造している期間は醸造所が吟醸香でいっぱいになるそうです。
麹は基本的に白麹を使っています。

石造りの古い建物にはオーク樽がずらり。樽で熟成させる原酒はトータルで5週間ほど熟成させます。香りを生かしたい場合は長期熟成、そうでない場合は短期熟成というように期間で変化をつけているそうです。

【テイスティングアイテム】
あさぎりの花

秋の穂
OakRoad
JinJinGIN
熊本ラム

高田酒造場  Kura Master コンクール受賞酒

福岡県 小倉城

バスに乗って福岡県小倉まで移動します。

16世紀末に豊臣秀吉の家臣として活躍した、黒田孝高によって築城された小倉城は天守閣をはじめとして、多くの建物が現存しており、観光地としても人気です。
また、城の内部には、博物館として歴史的資料や展示物が収められ、訪れる人々にこの地域の歴史を紹介しています。
特に1959年に再建された天守閣からの眺めは素晴らしく、周辺の海や街並みを一望することができます。

小倉城見学と小倉織体験

ライトアップされた小倉城の外観、そして内部を見学したのち、小倉織体験としてストラップづくりをしました。

天守閣でのカクテル対決
続いて、天守閣にて日本を代表するバーマン、増田タカノリさんと審査員たちのカクテル対決が行われました!
それぞれが九州の焼酎と食材を使って思い思いに素晴らしいカクテルを作り、皆でシェアするという、素晴らしい企画でした。

このカクテル対決の様子は各メディアで紹介されました。

Day 5
1⽉22⽇(水)

長崎県壱岐にて① GI壱岐

早朝福岡を出発、博多港から壱岐に向けて出発です。
壱岐の島は長崎県の北部にある離島で、一年を通じて穏やかな気候と豊かな自然に恵まれています。肥沃な土地ゆえに漁業だけでなく農業も盛んにおこなわれてきました。ミネラルが豊富な水と米などの作物に恵まれたこの島では古くから酒造りも行われおり、麦焼酎発祥の地とされています。
ジェットフォイルで壱岐につくと、なんと!とても盛大なお出迎えを準備してくださっていました。TVや新聞のカメラも待ち受けていて、到着から審査員たちの興奮も最高潮です。

GI壱岐とは
日本の麦焼酎の発祥地と言われている長崎県壱岐市(壱岐島)でつくられる麦焼酎で、壱岐島で伝統製法を守り、品質を担保し造られている麦焼酎だけが壱岐焼酎という地名を冠したブランドを名乗ることを許されています。原料に米麹1/3と大麦2/3を使用する壱岐独特の製法で、米麹を使用することによる天然の甘味とその豊潤な麦の香りが特長です。また、貯蔵熟成酒も多く、熟成らしいまろやかな味わいを醸し出しています。壱岐島では7つの蔵が壱岐焼酎を造っています。
500年もの歴史を誇る、麦焼酎発祥の地。
長崎県下で2番目に広い穀倉地を有する壱岐。古代より稲作が盛んで、豊富な穀物と良質な地下水を原料に清酒文化が発達し、多くの農家ではどぶろくがつくられていました。大陸から蒸留技術が伝わったのは、室町時代から安土桃山時代にかけて(16世紀)。江戸時代(17世紀)には、平戸藩統治下の重税のため、島民は米でなく麦を主食としていました。その余った麦を蒸留した自家製の焼酎と、米麹を融合させたものが、壱岐の麦焼酎の原型です。日本独自の酒づくりの特徴である米麹を使い続けたところに、島民の誇りが表れています。

  • 原料
    • 穀類は大麦のみを用いたものであること
    • こうじは米から製造された米こうじのみを用いたものであること
    • もろみに用いるこうじと穀類の重量比が概ね1:2となっていること
  • 製法
    • 長崎県壱岐市内で採水した水のみを用いたものであること
    • 長崎県壱岐市内で原料の発酵、蒸留、貯蔵及び容器詰めが行われていること
    • 米こうじ及び水を原料として発酵させた一次もろみに、蒸した穀類及び水を加えて更に発酵させた二次もろみを、単式蒸留機をもって蒸留したもの

壱岐の蔵酒造

壱岐に到着後、早速訪問開始。
一軒目は壱岐の蔵酒造です。
もともと兼業や家族経営も含めると壱岐に55社あった蔵元が酒税法制定後に12社に合併。1984年に6つの酒蔵が集まり、壱岐焼酎協業組合を創設。2010年にはさらなる飛躍と壱岐焼酎の発展を願って、社名を壱岐の蔵酒造と変更しました。目的の一つとして島内だけでなく島外にも壱岐焼酎を広く出荷するためということがありました。
16世紀から受け継がれた伝統的な技法を守りながら、減圧蒸留、花酵母仕込みなど新しい試みにも果敢に挑戦し、壱岐焼酎の美味しさを追求し続けています。またリキュールやジン作りも行っており、フードロスに関する考えや安心安全な食品提供に関する方針などに関しても力を注いでいる蔵ということで期待が高まります。

伝統と新しい挑戦

石橋福太郎社長にご案内いただきました。
まずは壱岐の焼酎の歴史、特徴、GI壱岐についてのお話を伺いました。
GI壱岐では
もともと盛んに栽培されていた米が年貢の対象になったため、年貢の対象にならない大麦で焼酎を作るようになりました。GI壱岐の規定としては麹米と大麦の割合を1:2とすることが原則。麹米に関する規則はありませんが、壱岐の蔵では国産米を使用しています。
1トンの米を1階で洗米してポンプで3階に上げます。その後、ドラム製麹機と三角棚で麹を作ります。 麹は白、黒ともに使用しています。一次仕込みは1週間。酵母は数種類の酵母をミックスしています。二次仕込み用の大麦も1階で洗浄し、その後2階の麦用のドラムで蒸します。効率よく焼酎造りができるよう、米麹と大麦用のドラムを分けています。
原料の大麦は壱岐産だけでは足りないので、熊本、佐賀からも取り寄せています。そこで、大麦の産地によって味わいに違いはあるかという質問が出ました。石橋社長によると、壱岐の水には壱岐の麦が一番相性がよく、いい結果になるそうです。

蒸留には直接もろみに蒸気がつかないように関節的に熱しています。
減圧蒸留はもろみが45度で沸騰しますが品質が荒くならないようにゆっくり蒸留します。蒸留の「初垂れ」「中垂れ」「末垂れ」を分けず、すべてブレンドして使います。
麹の米は90%くらいの精米歩合で麦は68%ほど磨きます。麦も磨けば雑味がなくなるそうです。
麦の香ばしい香りを引き立てるために焙煎をしているかどうか、という点について審査員から質問がありました。壱岐ではそういった試みをしている蔵元はないそうです。

また、壱岐の蔵酒造では酵母の培養もしています。酒質にあった酵母を耳かきのような小さなスプーンで培地に移し取り出して30℃で培養する様子も見せていただきました。
壱岐の神社の桜で取った麹を長崎県などの協力で開発中だそうです。

貯蔵にはシェリー樽や甕を使っています。

今回の視察では一貫した最新施設に審査員たちが驚いている様子でした。
大型バスでの団体も受け入れ可能というテイスティングスペースではうるち米とタイ米を比較するラインナップやリキュールのテイスティングも行いました。

【テイスティングアイテム】
なでしこ
放下者
二千年の夢41度
Pottery
大祖
しそリキュール
ゆずリキュール

訪問後、途中で壱岐のシンボル、猿岩に立ち寄りました。

山の守酒造(施設訪問)

続いては1899年創業、壱岐の中で最も歴史のある蔵元、山の守酒造の施設を訪問しました。
この蔵では創業当時から甕仕込み、甕貯蔵を行っており、今使用している和甕はもう製造していないものなのでとても貴重なもの。一次仕込み、二次仕込みともに甕で行う手法は山の守酒造唯一のものです。

甕仕込み、甕貯蔵

米麹には壱岐産の食用米を使用し、仕込み水は地下水をくみ上げています。4つの甕で一次仕込みを終えたもろみを10に分けて大麦を加え、二次仕込みをします。酵母は購入して添加しています。

蒸留の見学の際、間接蒸留と直接蒸留について意見交換がされました。直接蒸気を当てると、結局水を加えることになるかどうか?結局、蒸気で足す水分と蒸気として出ていくアルコールが同じ量となるそうです。蒸留は一日4回に分けて蒸留。
山の守酒造では甕で仕込んだもろみは常圧蒸留をします。初垂れと末垂れはカットし、一番質の良い中垂れの部分のみ使いますが、味を見ながら苦味が出ないギリギリのところで止めます。また、タンクで仕込んだもろみは減圧蒸留をします。もろみの廃液は牛の餌となるそうです。

貯蔵用の甕は手作業できるように、多治見産の小さい甕が使われています。熟成期間はおよそ2-3年。熟成庫の温度は常温なので季節によって気温の変化があります。樫樽熟成はテスト中の段階で、スペインのシェリー樽などを使用します。
新しい樽は1か月、3か月寝かせてホーロータンクに移しますが、それは本格焼酎には色の濃度に制限があるので、色がつきすぎないように、ということです。

玄海酒造(施設訪問)

続いては1900年創業、玄海酒造の施設を訪問しました。玄海酒造は域で一番高い山、岳の辻のふもとに位置しています。
この蔵は貯蔵容器の多様性による味わいのバラエティの多さが特長です。
山内昭人社長が案内してくださいました。

訪問時期には造りが行われていなかったため、ビデオを用いての説明がありました。
アイガモ農法で栽培された米とオーガニックの大麦を使用。山の守酒造に比べ、玄海酒造は10倍ほど生産量があります。規模の大きい玄海酒造では1日で120トンの水を使います。この水は地下70-120mから汲み上げています。スタッフは山の守酒造と同じスタッフのため、造りは4月~12月。その他の期間は主に山の守酒造で造りを行うそうです。

貯蔵容器の多様性による味わいの違い

昭和36年から使い始めたというシェリー樽はホワイトオークですが黒く塗られており、液体が漏れた時にわかりやすいようになっています。

また、割り水をしてから貯蔵するものと原酒のまま貯蔵するものも商品によって変えています。
審査員から熟成方法に関して、ワインに関しても容器をガラスにしたり、音楽をかけたりといろんな工夫をしているところもある、今後何か挑戦したいことはあるか?という質問がありました。海の中にアンフォラを埋めたり、瓶を沈めて貯蔵したり、山の上などでも?というユニークな意見もありましたが、実際はGI壱岐の規定でまだまだ難しい部分もあるようです。

2蔵合同試飲会(山の守酒造&玄海酒造)

2蔵の施設を訪問したのち、合同試飲会を行いました。
各テーブルに用意された氷や水、ソーダなどを使って味わいの変化や焼酎の可能性について意見が飛び交いました。

【テイスティングアイテム】

山の守酒造
守政
一州
岳の辻

玄海酒造
松永安左衛門
壱岐ロイヤル
壱岐ブルー
壱岐スーパーゴールド

テイスティング後は壱岐の島で大切に伝え、守られてきた神事伝統芸能である神楽を鑑賞しました。壱岐は神道発祥の地とも言われ、神社の数は大小合わせると1000社以上あります。
壱岐神楽は、約700年の古い伝統と歴史をもち、日本神話に関わりの深い壱岐で奉納され、国指定重要無形文化財に指定されています。
壱岐の神社に奉職する神職にしか舞う事や音楽を演奏することが許されないきわめて神聖なもの。譜面等はなく口頭でのみ伝承され続け、たたみ2畳の上で舞われます。秋から冬にかけて、島内の各神社では毎日のように神楽が奉納されるそうです。
初めて見る舞いや音楽に審査員たちもくぎ付けとなっていました。

夜は壱岐の蔵元さんたちとの懇親会です。
壱岐の7蔵が一緒に作った焼酎で乾杯した後、皆さんが持ち寄ってくださった焼酎でハイボールをつくり、審査員たちが皆さんにサービスしたりして和やかな夕べとなりました。

Day 6
1⽉23⽇(木)

長崎県壱岐にて②

重家酒造(施設訪問)

壱岐島訪問2日目は1924年創業の重家(おもや)酒造の施設訪問から始まりました。
2024年に100周年を迎えた重家酒造は壱岐島の中で一番小さい蔵。こちらでは酵母の違い、大麦品種の違い、麹の違い、蒸留(減圧、常圧)の違い、長期貯蔵など様々な挑戦をしています。

製麹技術の進歩と酵母、大麦品種の特徴の違いについて重点的に学びました。

製麹は9年ほど前まで手作業で行っていました。現在は最新の製麹機を導入後、ほとんどは作業を一人で行えるそうです。製麹の際、通常は24時間でドラムから出しますがこちらでは2日間かけています。1トンの容量のドラムの中にあえて450kgしか米を入れず、三角棚を使わない分体積を薄くし、まんべんなく麹菌をつけることができます。ドラムですべてを簡潔させるメリットは清潔な状態を保てること。他の菌がつかないドラム製麹機の導入により、洗米、浸漬、蒸し、温度コントロールなどが自動でできるため、労力がかなり軽減されたそうです。麹菌を振ったらあとは米がくっつかないよう4回ほど人の手によってかき混ぜる作業をします。
麦も同じドラムで蒸し、二次仕込みに使用します。重家酒造では麹米には壱岐産のジャポニカ米、麦は壱岐産はるか二条大麦の他、みしまはだかという六条大麦を使用した商品もあります。使用する麹は鹿児島産白麹、黒麹。河内源一郎の麹です。
酵母は協会酵母2号。夏用の製品は軽さを出すため、4号を使います。

蒸留器は特別にカスタマイズし、減圧と常圧の良いところを掛け合わせた、オリジナル蒸留器を使用しています。この蒸留器では常圧蒸留の際に容器内を真空西、周囲に熱を加えることで蒸留をしています。焼酎だけでなくジンもこの蒸留器で作っています。

大麦生産団地見学


大麦畑の見学です。大麦は小麦より早く、約1800年前に伝わり、奈良時代頃には盛んに栽培されていました。壱岐全体で平成13年から作付されたはるか二条は壱岐の粘土質の土壌の畑で200haほど栽培されています。33の農家が大麦づくりをしていますが有機栽培は行われていません。肥料に関する質問などが審査員から出ましたが、主に6月~11月にかけての米作りでは牛糞は使用できませんが、その裏作としての大麦栽培には畑の疲労を補うため牛糞堆肥をすることもあるそうです。
11月に種を蒔き、4月に穂が出て開花、その後5月に収穫されます。訪問した1月はちょうど新芽がでており、鴨などが食べてしまうのを防ぐため、鴨除けの黒い旗がなびいていました。

一支国博物館見学

続いて、一支国博物館を訪問しました。
壱岐は弥生時代から東アジアの先進地である中国大陸や朝鮮半島と海を介して隣り合う立地から、大陸や半島の最新文化が絶え間なく渡来しました。壱岐から日本列島の各地へ伝播、定着して日本人のその後の生活を大きく豊かに変えていきました。魏志倭人伝にも登場している壱岐。国際交流の拠点として
栄えた原の辻遺跡も展示物の一部のようによく見ることができました。
子供にも楽しんでもらえるようにと工夫された博物館で、珍しい土器などにも手不を触れることができ、審査員たちも出土品を手に取り、その重さを測ったり、当時の装飾品の伝来などについても積極的に質問をしていました。
壱岐の歴史の深さに触れることのできる見学となりました。

猿川伊豆酒造(施設訪問)

続いては猿川伊豆(さるこいず)酒造の施設訪問です。1903年創業の猿川伊豆酒造は島内屈指の散水の仙境“猿川川”の河畔に位置しています。この環境が清らかで豊かな仕込み水と焼酎の熟成に絶好の条件を作り出しています。
醸造場内を横切る猿川川の水の硬度や超音波熟成による焼酎のまろやかさ、熟成酒のブレンドなどという点に重点を置いて訪問をしました。

壱岐産の二条大麦へのこだわりとサルコー式蒸留器

こちらの蔵では、河内源一郎商店の白麹、麹米には壱岐のにこまるを使用しています。
麦は壱岐産のはるか二条大麦を65~70%ほど指定の業者で精麦してもらいます。酵母は2号のみ使用。この酵母は壱岐の風土にあってるのか、香りに特徴があるそうです。

一度の仕込みの量は米450kgに対し大麦900kgの割合。
精麦会社が、2社あって会社によっても差がありますが、納品のタイミングがそれぞれ異なるので2社のものをブレンドして作ることはありません。
河内源一郎の三角棚六条大麦を使わない理由は、壱岐では二条大麦を作っているから。
平成16年(2004年)に壱岐産の二条大麦だけで焼酎造りが賄えるようになったそうです。もちろん、年によって麦の収穫の量は違います。例えば2024年は暑さと雨で収穫量が少なかったそうです。収穫時期は10月なのでその前に作る時は昨年産の大麦を使用しますが、保存期間が長い大麦は乾燥してしまい水分が少なく、その点も考慮して醸造する必要があります。

熱心に聞いていた審査員からは、壱岐産の大麦にしてどのような変化を感じることができたか、という質問などがありました。伊豆社長によると、壱岐産の二条大麦は当初は粒が小さく、もろみの目量も少なかったのですが、アルコールの取れがいいそうです。

続いて、蒸留について学びました。企業秘密の部分が多いオリジナルサルコー式常圧器では、常圧、減圧両方可能で、間接蒸留も直接蒸留もできるそうです。常圧の時には直接蒸留だけで初留から最後までカットせずにすべてブレンドします。
蒸留器に断熱材を巻くなど、保温する工夫などをしているのかという質問に対しては企業秘密だそうで、先代がびっくりするほどカスタマイズして出来上がった蒸留器だそうです。この蒸留器の特徴は機械自体が厚みがあるり、アフターフォローがしっかりあるところ。
蒸留で得た焼酎はホーロータンクで半年から一年半ほど保存されます。

壱岐の華(施設訪問)

本日3軒目は壱岐の華。1900年創業以来4世代にわたり壱岐焼酎の伝統をつなぎながらも常に革新の努力を惜しまない蔵は今年125周年を迎えました。
気候変動対策として2000年から導入された全自動製麹プログラムによる安定した麹造り、また原酒を蒸留後すぐに目的濃度まで割水してから数年間貯蔵する和水熟成などが特徴です。
米からくる甘味と樽熟成からくるまろやかさを感じられる焼酎造りをしています。

全自動ドラム式製麹機導入のメリットと和水熟成

訪問した1月はすでに何度か仕込みをした後。貯蔵していた樽から焼酎を出し、瓶詰めを行う時期でもあります。2月からまた仕込みが再開されます。
仕込みの量は米1トンに対し大麦を2トン。原料の大麦はほとんど壱岐産のものを使用し、米はその時によってコシヒカリ、ニコマルなどが使用されます。

製麹ドラムの容量は1.5トンありますが1トンしか入れません。平成12年(2000年)、全自動ドラム式製麹機が北九州で初めて導入されたのがこの蔵。コンピュータでプログラムが組み込まれているのでボタンひとつで枯らしの作業まで正確にできるようになり、安定した質の麹を作ることが可能になったことで焼酎に甘みがのるようになったそうです。

白麹、商品によってはを使います。
米や麦は生のままクレーンでドラムに入れますが、国産米は特にこの方法だとその日の天気で変わってしまう水分量のコントロールがしやすいそうです。また、湿度も重要で湿気が多い時は温度を下げる、逆に乾燥している時は1.2度ほど温度を上げます。
鹿児島県のメーカーの製麹機には事前にデータが入っていることもあります、鹿児島と壱岐では気候が違うので、失敗と経験を繰り返しながら独自のプログラムを組み込んだそうです。
全自動での製麹機ですが、失敗してしまったとき、うまく働かなかった時には手動に変えるそうです。

蒸留器は特注の常圧蒸留器の他に減圧用蒸留器は別にあります。合理的に作業ができるよう、また原料に負担がかからないようにクレーンでの作業などグラヴィティシステムを採用しているので3人ほどで作業が可能です。

蒸留して出来上がった原酒の初留めは使わずテールは早めにカットして廃棄します。特に常圧蒸留の焼酎はこの作業が品質に影響するそうです。こうして出来上がった原酒を割水してから貯蔵する、和水熟成をしています。
硬度120、中硬度の地下水で43度の原酒を30度まで割水をした焼酎を樽で貯蔵することにより、ボリュームは多くなってしまいますが、水にも樽の香りが付き、一体感のあるまろやかな焼酎となります。樽は北米産のアメリカンホワイトオークを使い、日本の樽会社が作っています。

瓶詰めスペースも見せていただきました。壁がオレンジ色になっているのは羽虫などが入りづらくするためですが、瓶詰めスペース内にも虫をキャッチする装置があり、その虫を分析して翌年に更に効果的な対策います。こちらの蔵ではサントリーの麦焼酎いちのくにを作っており、設備にもサントリーの監査が入るそうです。

昼食には「うめしま」さんにて壱岐の名物、壱岐牛をいただきました。

天の川酒造(施設訪問)

壱岐の蔵元最終訪問は天の川酒造です。バスでのアクセスが難しかったのですが、思いがけない素晴らしい近道を教えていただき、神社跡の境内を通っていくことになりました。

1912年創業の天の川酒造では「常圧蒸留」と「貯蔵」にこだわって焼酎造りが行われています。
また、この蔵では壱岐産の大麦を使用するのはもちろんのこと、麹米に壱岐産のうるち米とインディカ米を使用しています。蒸し方も違ってくるそうです。
なぜタイ米を使うのか?その味わいの違いは?とても興味深い麹違いの比較ができそうです。

麹米の違い、常圧蒸留の特徴と貯蔵の重要性について学びました。

こちらの蔵では仕込みは2月~3月にかけて5回行われ、全部で5トン仕込まれます。麹米には現在はタイ米を使っていますが、それは日本米より味の濃い焼酎ができるから。タイ米は日本米に比べ固いので二度蒸しをします。一回目は30分蒸し、その後1時間ほど風を当てて60度くらいまで温度を下げ、打ち水をして2度目の蒸しを50分ほどします。

仕込み、割水には玄武岩層の地中70メートルの深さから採水する硬水の地下水を使用します。

一次もろみは1週間、2次もろみは2週間発酵させてできあがります。原料の麦は2軒の精麦会社から仕入れていますが混ぜて使用することはありません。

蒸留は常圧のみ。蒸留器に断熱材を巻き保温することで15分ほどの短い時間で沸騰させることができます。蒸留器内部の構造やそれによる蒸気の動きなども絵を描いて説明いただいたことでより理解が深まりました。
こうしてできた原酒のアルコール度数は43度ほど。蒸留した後3回ほど常温濾過し、また濾紙で仕上げ濾過をしたのち3年以上ホーロータンク、樽などで熟成します。甕熟成の焼酎は5年以上の熟成となるそうです。
常圧蒸留では、水とアルコールの他に多くの種類の微量成分が留出します。
このため原材料の持つ香りやうまみが引き出され、焼酎の個性となります。蒸留された焼酎の香味の調和を整えるため、貯蔵し熟成します。貯蔵により荒々しい欠点が除かれ、味わいは安定しまろやかになります。
ろ過の機械やろ紙も見せていただき、審査員たちはろ紙に触れたりしながら興味深く説明を聞いていました。

今回、壱岐の7蔵全蔵の施設を訪問し、審査員が声を揃えて言っていたのは、壱岐のような小さな島に、焼酎造りに関するあらゆる最新設備が揃っていることへの驚きでした。

4蔵合同試飲会(重家酒造、猿川伊豆酒造、壱岐の華、天の川酒造)

4蔵の施設を訪問したのち、合同試飲会を行いました。

麹、大麦品種、蒸留、熟成などに重きを置いた比較ができるテイスティングで、各蔵の特徴がよくわかる貴重な場となりました。
また、テーブルの上には各蔵が用意したおつまみも用意され、日本で焼酎に合わせて楽しんで食べられているものなどがわかり、審査員たちもテイスティング中にチョコレートなどを合わせて味各焼酎に合ったペアリングのヒントを得ていました。

【テイスティングアイテム】

重家酒造
ちんぐ白麹仕込み
ちんぐ黒麹仕込み
御島裸
サブロック36
猿川伊豆酒造
猿川
猿川円円
長崎街道ピュアホワイト
 
壱岐の華酒造
海鴉
初代喜助
侘び
寂び
天の川酒造
モンキーロック
天の川 壱岐づくし
天の川12年
 

Kura Masterセミナー

夕方、ホテルステラコート大安閣にてKura Masterのセミナーが開催され、長崎県産業労働部企業振興課、長崎県壱岐振興局管理部地域づくり推進課、壱岐市企画振興部商工振興課、日本酒造組合中央会、壱岐酒造協同組合(蔵元)、 九州経済産業局国際部の皆様とKura Master審査員が参加しました。

まずKura Master運営委員長の宮川さんからコンクールの概要の説明があり、その後フランスのスピリッツ市場についてのプレゼンテーションが過去の研修旅行参加審査員その後の採用例、使用状況の紹介などを含めて行われました。

① フランスのスピリッツ市場、焼酎の認知度・状況
② 焼酎の提供場所(レストラン・バー・居酒屋等)
③ 焼酎の飲み方(ロック・水割り・湯割り等)、食事との関係(食前、食中、食後)

質疑応答にも審査員たちがたくさんのコメントを話しており、有意義な意見交換の場となりました。

セミナー終了後は壱岐酒造協同組合様主催の懇親会が催されました。
壱岐市長、壱岐税務署長、壱岐酒造組合の皆様、長崎県壱岐振興局長、九州経済産業国国際部の皆様とKura Masterの審査員たちの貴重な意見交換、交流の場となりました。各蔵元さんがご用意してくださった焼酎を使って審査員たちがハイボールをふるまい、壱岐の名物のお食事を楽しみながら終始和やかな雰囲気での懇親会で壱岐の7蔵の団結力とパワーに審査員も感動していました。

Day 7
1⽉24⽇(金)

さて、いよいよ研修旅行も最終段階となりました。
郷ノ浦港に到着すると、壱岐の皆様がお見送りに来てくださっていました。
皆様のおもてなしに感謝をし、名残り惜しかったのですが、恒例のバイバイセレモニーをして岡山県に向かいます。

岡山にて①

宮下酒造

電車、バスなどを乗り継いでいよいよ豊かな自然、農産物に恵まれた岡山に到着。
岡山県一か所目の訪問は宮下酒造。1915年に岡山県南で創業した後、より良い水を求め1967年に岡山産大河川の一つである旭川のほとりの現在地(岡山市西川原)へ蔵を移転し今に至ります。

この蔵の特徴は何と言っても清酒(生産量20%)の他にビール(50%)やウィスキー、リキュール、スピリッツなど(30%)多様な商品を生産しているところ。
そして、日本酒に関しては、岡山県特産の酒造好適米で酒米のルーツといわれている雄町米を超高精白して作られたラインナップを揃えているところ。その精米歩合の違いから出る味わいを楽しみに訪問しました。

ISO22000基準の徹底した衛生管理と雄町の超高精白の技術

ヨーロッパ基準の徹底した衛生管理のもと、従業員の醸造スペースへの入り口を一カ所に集中させ、そこで殺菌をしてから一人ずつ醸造所に入るシステムを導入。

日本酒造りの現場訪問一軒目ということもあり、基本的な醸造のお話や疑似米を使用した米の蒸し方などについても詳しく教えていただきました。
麹造りの7つのステップについては麹室を実際に見学しながら学び、協会酵母の特徴や生酛、速醸についても審査員から質問が飛び出していました。

大粒で心拍が球状で大きいため胴割れしやすい雄町米をここまで磨き上げる最新技術は圧巻です。

日本酒製造工程を見学した後は、クラフトビール工房「独歩」にてビール醸造のお話を伺いました。クラフトビールはどのようなものを作っているのかなど、審査員たちも興味津々です。
ホップの違い、ホップの形状や生のホップについて積極的な意見交換が行われました。

また、ウィスキー、ジン、ウォッカづくりについてもお話を聞きました。
ジンは米焼酎ベース、ウォッカは麦焼酎をベースに作られているというお話を聞き、こちらの蔵で作っている焼酎に使われる麹などについて質問が出ました。樽貯蔵ではシェリー樽、ブランデー樽、そしてミズナラの樽を使い、3年以上熟成しています。ここでも、貯蔵スペースの温度コントロールや樽蒸発する割合など、審査員たちの好奇心旺盛な意見交換を交えながらの見学となりました。

テイスティングでは宮下酒造の一番の特徴である磨きの違いを比較する興味深いラインナップご用意いただきました。
高精米することによる雑味への対応など、真剣にテイスティングが進みました。

【テイスティングアイテム】

純米大吟醸宮下エステートAji
純米大吟醸お待ちRakusei
極聖純米大吟醸天下至聖

シングルモルトウィスキー岡山トリプルカスク
シングルカスクウィスキー岡山
クラフトジン岡山

宮下酒造 Kura Master 日本酒コンクール受賞酒

夜の懇親会には岡山県知事もご参加くださり、岡山の伝統工芸の一つである日本刀のデモンストレーションも用意されていてとても盛り上がりました。

岡山の蔵元の皆様のお酒と岡山の名物をいただきながら、明日からの訪問に期待が膨らむ意見交換ができました。

Day 8
1⽉25⽇(土)

岡山にて②

菊池酒造

本日の訪問は1878年創業、菊池酒造から始まりました。菊池酒造が所在する倉敷市玉島は、晴れの国とも呼ばれる岡山県の中でも温暖な地域で、その水質の良さから高梁川流域は特に多数の蔵元が今なお酒造りに励んでいます。
この蔵の特徴は、音楽家である杜氏がモーツアルトが流れる蔵で繊細で卓越した備中杜氏の技による品質本位の酒造りに挑んでいる点。そして、肥料や農薬を一切使わない完全な自然農法を採用した米作りをしている点です。
自然農法や音楽を取り入れることで表現される味わいの変化や、大吟醸、香り系のお酒造りについてのお話、そして米作りに関する土壌のお話などを聞けることを期待して、いよいよ訪問スタートです。

雄町米、米の質へのこだわり

普通酒より高級酒のほうが製造が多い菊池酒造では普通酒、本醸造、純米吟醸、純米大吟醸の割合はそれぞれ25%程となっています。

岡山を代表する酒米の雄町は背が高いので、岡山以外でほとんど栽培されていません。山脈に囲まれた、穏やかな気候の岡山は風も少なく雄町の栽培に適しているそうです。菊池酒造は無農薬の米で作った酒が特徴です。農薬も肥料も使わない自然農法を取り入れた農家から米を仕入れています。

酒造りは冬の間のみ。一行が訪問した1月が最盛期だそうです。
一度に300キロの米を蒸して大吟醸などは自然放冷します。

洗米には洗米機を導入していますが、高級なお酒は手作業で洗米します。7℃の水で浸漬した後、ウッドソンの脱水機で脱水。
余分な水を切った後、水分量を測り、正確な水分給水率を出すことが重要だそうです。また、蒸しの作業によって水分量も増えることも考慮します。

蒸し上がった米は麹室へ。室温42℃の麹室で48時間かけて製麹します。小さな箱で米を落ち着かせ、大きな箱に入れてたね麹をつけ、次の大きな箱で風を送って冷まします。

醸造は三段仕込み。クラシック音楽をかけながら醸造をします。発酵の安定のため、酵母は協会酵母を添加しています。

醸造所では親子3代でバイオリンを演奏してくださいました。

火入れ殺菌についても伺いました。
瓶で火入れをします。お湯を通して、65℃くらいに一気に加熱して一気に冷ます火入れ方法だと品質が落ちないそうです。また、密封されているので香りは飛ばないのだそう。
テイスティングルームには農家の方も来て下さり、雄町栽培、田んぼについて深いお話を聞くことができました。稲を作る時に中干しをし、稲の生命力を上げること、収穫について、年間を通しての田んぼでの作業などについて伺いました。ワインはぶどう栽培から醸造、瓶詰まで一貫して行うことが多いため、審査員たちは原料の栽培に関してとりわけ興味を持っているようでした。

【テイスティングアイテム】
純米吟醸 燦然 朝日55
純米吟醸 奇跡のお酒 朝日55
純米吟醸 奇跡のお酒 雄町55
純米大吟醸 奇跡のお酒 日本万歳雄町40
本醸造 燦然

菊池酒造 Kura Master 日本酒コンクール受賞酒

菊池酒造訪問の様子が各メディアで放送されました。

丸本酒造

続いては1867年創業、丸本酒造を訪れました。
こちらの蔵の特徴は1986年に山田錦の自家栽培に着手して以来、原料を38年前から自家栽培している点。ワインでいうとドメーヌという概念です。また、酒蔵として初めて、日本(JAS)、ヨーロッパ、(Euro leaf)、アメリカ(National Organic Program)で有機認証を取得しました。
米にテロワールはない!と言い切る丸本会長。酒蔵に合わせた米を栽培すべきという哲学に基づき、宇宙につながる酒造りをモットーにした酒造りを理解すべく、訪問をしました。
岡山の地形がなぜ雄町米の栽培に適しているのか?
朝日は食用米だがそれを使う理由とは?
20ha以上なので大規模栽培用のコンバインなどの設備により、少量生産が難しい点。

米自家栽培とその酒造りにかける思いと醸造工程でのユニークな工夫

丸本仁一郎社長は6代目、息子さんが7代目で農業部門を担当しています。
日本酒蔵は現在減少してきていますが、その中でもお米を作ってる酒蔵はとても少ないそうです。酒造りをするものとして、お米を作ることで酒がわかるという考えです。ワインは畑で味がかわる。酒は酒蔵で味が決まる。と言えますが、酒蔵は米の質についてかなり気になるのに、農家から仕入れていると、うまくカバーできない部分があるそうです。そこで自身が作りたい酒にあった米を息子さんにオーダーして作ってもらうことにしたそうです。

また、たんぱく矛盾についても伺いました。農家は肥料として窒素を撒くのでタンパク分の多い米ができてしまいますが、酒の雑味やオフフレーバーは実はそのタンパク質や脂質が原因。そこで精米してたんぱく質を削りますが、それは矛盾している、と考えます。
麹米と掛け米の米の固さの理想は違います。自家栽培をしていれば、お米の固さをコントロールするための水分量を田んぼで栽培している時点でコントロールできるのではないかと考えます。
このような興味深いお話に、審査員からは当然テロワールの話、土の成分などの質問も出ました。

座学の後、実際に施設を見学しました。

初めて目にする精米機の前では、精米歩合とその度合いによる所要時間などについてもグラフで説明があり、審査員も聞き入っていました。

麹菌は室で撒きますが、丸本酒造ではオリジナルに開発された「ぱふぱふくん」が大活躍です。ぱふぱふくんで麹をたっぷりまんべんなく含ませた空気を米を麹室へと運ぶチューブの中に送り込み、まんべんなく種付けができるシステムです。また、製麹中は麹の管理は24時間体制で行わなければなりませんが、丸本社長が設計した「夜勤くん」が夜中に自動で働いてくれるそうです。

基本的には夏は田んぼに集中し、冬は酒造りに集中します。田植えは5月、稲刈りが10月に終わり、その後は田んぼの土をケアします。

施設見学の後、丸本社長が標高350mの竹林寺山の展望台までご案内くださいました。ここには国内最大の反射望遠鏡がある他、なぜ岡山の地が雄町の栽培に適しているのかというのが一目で見てわかるような景色が広がっていました。

【テイスティングアイテム】
竹林 かろやか
竹林 ふかまり
竹林 アースサイエンスBIO
泡々酒

夜は岡山県の蔵元さん同席での懇親会。とても寒く、雪見風呂、雪見酒が楽しめました。審査員たちも浴衣を着てリラックス。それぞれの蔵元さんがご用意くださった日本酒と岡山の美味しいお料理をいただきながら終始和やかな懇親会となりました。

Day 9
1⽉26⽇(日)

岡山にて③

辻本店

本日の訪問は1804年創業、岡山の酒蔵の中で最も歴史があり、その建物が有形文化財としても登録されている辻本店からスタートです。
こちらの蔵の特徴は全量を雄町米でシンプルな酒造りをしている点。岡山県内の8カ所の農家さんから仕入れています。ワインで例えるならばブルゴーニュの単一品種のような取り組みです。また、菩提酛仕込みを重視している点も見逃せません。
雄町米という最古の酒米を使い、クラシックな酵母で醸すことにより、米本来の味わいで付加価値が付くと考えています。サスティナブルな米作りや米の等級、菩提酛のお話などを期待して訪問します。

菩提酛の復活と全量雄町のシンプルな酒造り

辻総一郎7代目蔵元と麻衣子杜氏にお迎えいただきました。一行の訪問時は醸造期間ではなかったため、座学とテイスティングを中心に行いました。
辻本店は近くの旭川の伏流水を使用し、酒造りをしています。特に、雄町を2022 年から全量使用しており、酒母には菩提酛が全生産量の85%を占めています。近い将来には菩提酛も100%にしたいそうです。
雄町を栽培する田んぼは7つのゾーンに分かれており、それぞれのゾーンで味わいの違う雄町が育つという、テロワールの考えです。

日本酒のもろみを健全に発酵させるためには、大量の乳酸を使用して雑菌の繁殖を抑制し、その一方で多くの優れた酵母を活性化させることが求められます。この目的を達成するために、発酵を始める前に乳酸と優良酵母を豊富に含んだ酒母を作り上げます。
「もと」の仕込み水には、乳酸菌を加熱したものが使用されます。
具体的には、生米と炊いたご飯を仕込み水に加え、酸性にしたものを「そやし水」と呼び、これを「もと」の仕込み水として使います。

この製法は、辻さんの親族で、ロンドンでアンティークを扱っている方がたまたま手にした『日本山海名産図会』という古文書に奈良の正暦寺で発祥した菩提酛に関する記述があったそうです。その従来の「菩提もと」の製法を基に、先代杜氏の原田巧さんが何度も試行錯誤を重ね、御前酒の蔵に最適な製法として新たに生み出した「菩提もと」が岡山の菩提酛です。奈良とは違い、米ではなく少量の米麹を水に浸し、乳酸菌を繁殖させて「そやし水」を作ります。乳酸が十分に生成された後、一度加熱して殺菌を行い、安全性を高めた後に仕込水として使用します。

そして、そやし水は保存が利くのか、どのように保存しているのかなど審査員の興味も最高潮となったところで珍しいそやし水のテイスティングもさせていただきました。

審査員からの、そのように苦労をして再現し、オリジナルの菩提酛を作り上げたのに、企業秘密にすることなく、逆に広めているのはなぜか?という質問には、あの古文書を手にして、一度消えていた昔の技術を再現したものとして後世に伝えていく義務があると思うからというお答えに一同感動していました。

【テイスティングアイテム】
御前酒1859
御前酒 貴醸酒
御前酒 菩提酛 にごり
御前酒 ゆず酒

辻本店 Kura Master 日本酒コンクール受賞酒

白菊酒造

続いては創業1886年、白菊酒造を訪ねます。
創業当初は岡山県の中西部高梁市成羽町に蔵を構えていましたが、1972年の水害で使用不能となったため、翌年現在地へ移転。ターニングポイントを経て進化し続けている蔵です。
この蔵はとにかく米と日本酒造りへのこだわりが強いのです。創業時にはおそらく雄町米を使い、生酛仕込みをして、蔵付き天然酵母で日本酒を醸していただろうと、自分たちの蔵の歴史を作ってきた昔の酒を復活させるべく、その年によって味わいの異なる日本酒造りをしています。
また、一部自社オリジナルの酒米(造酒錦、白菊)を栽培しているところも気になります。
岡山の米、水、技の三位一体の造りで作られた日本酒は岡山の風土を最大限に表現しているだろうと想像を膨らませながらの訪問です。

米と昔ながらの日本酒造りへのこだわり

雄町、山田錦のほか、自社オリジナルの米、白菊とみきにしきも栽培しています。また、飯米の朝日も使用しています。
一行が訪問した時期はちょうど大吟醸の仕込み中。焼酎と違い、日本酒では黄麹を使用することが多い点に審査員たちも興味を持っており、黄麹というが黄緑色なのはなぜか、などの質問がありました。黄麹は菌がしっかり育つと黄緑になるそうです。
発酵中のもろみも試飲しました。

岡山県の雄町を使い、昔ながらの生もと仕込みを取り入れ、協会酵母などもなかった時代なので蔵付き酵母で自然に発酵、醸造することにより昔の白菊酒造の酒を仕込んでいます。自然の乳酸菌、酵母を使って醸すことにより、白菊酒造にしかできない酒を再現しています。

【テイスティングアイテム】
仕込み水
純米大吟醸 大典白菊
純米 大典白菊 造酒錦
純米 大典白菊 白菊米
大典白菊 生酛純米 雄町70
単式蒸留米焼酎DAN10年古酒
日本酒仕込み梅酒 香春梅

白菊酒造 Kura Master 日本酒コンクール受賞酒

Kura Master受賞作の賞状を持って記念撮影

岡山県日本酒×フレンチペアリングディナー

ANAクラウンプラザホテルにて岡山県の日本酒とフレンチをペアリングした特別ディナーが開催されました。この企画は、岡山県が誇る地元産の日本酒と、フランス料理界の一流シェフ、エスコフィエ協会国際本部アンバサダーのニコラ・ルスール氏とANAクランプラザホテルの中野大輔総料理長が企画した特別なコース料理とのペアリングを通して岡山とフランスの食文化の魅力を融合させて贅沢な時間を提供するものです。

一般のお客様80名様と伊原木隆太岡山県知事やMiss SAKE 2024岡山大会グランプリ小野愛理左さんの参加のもと、いよいよKura Master審査員たちの出番です。
各自が持ち回りのテーブルにサービスをするというサプライズ。フランスの一流ソムリエ、バーマンらしい堂々としたサービスでお客様を感動させていました。また、それぞれのペアリングに関するコメントも一人ずつ話す機会もいただき、審査員たちもおのおののエモーションをお客様と存分に共有していました。

岡山の日本酒がフランス料理とどのように響き合い、新しい価値を創り出すのか、その可能性を感じられた素晴らしいひと時となりました。

Day 10
1⽉27⽇(月)

岡山にて④

利守酒造

とうとう今回の研修旅行最終日となりました。本日の訪問は1868年創業、幻となっていた酒米『雄町』を復活させた、利守酒造です。
“地の米、地の水、地の気候と風土”で醸してこそ真の地酒という信念に基づき酒米雄町を復活させました。
雄町の自社栽培もおこない、原料から全てを行う米作りから酒造りまで一貫した造りを目指しています。
米のうまみが溢れる食中酒として楽しめる日本酒をテーマに、田んぼの一生など栽培に関するお話が聞けるかもしれません。また、備前焼に入れ長期熟成した熟成酒も楽しみです。

米の旨味へのこだわりと長期熟成

まず初めに古酒の貯蔵スペースへご案内いただきました。洞窟なども利用して貯蔵しているそうですが、雄町は熟成させるほど旨味が出てくるそうです。熟成期間は岡山の酒蔵で一番古く、古酒は澱も瓶内に出てきていますが、米由来の澱は旨味なのでそのまま出荷します。審査員からは当然、消費者は澱が入ったままでも果たして抵抗なく購入してくれるのか、というような外観に関する質問もありましたが、消費者は抵抗なく購入してくれるとのこと。

精米歩合は60%-70%ほど。あまり削ってしまうと雄町の魅力が薄れてしまいます。火入れは熟成前と瓶詰後2回行います。

雄町の発見は、160年前ほど前、当時の農家だった岸本甚造さんによります。鳥取県の伯耆大山を参拝の折、見るからに立派な変わり穂を発見した岸本さんは許可を得て持ち帰った2本の穂から雄町が一番よく育つ赤岩地域で栽培を始めました。
当初は2本の穂にちなみ「二本草」と呼ばれていましたが、その後岡山県内一体に栽培が拡大。酒米としての評判が全国に知れわたると、いつしか栽培地の地名である「雄町」、特に赤岩雄町の名が広がっていったそうです。
背丈が160cmにもなる雄町は栽培が非常に難しい上に天候に翻弄されやすい、いわば生産者泣かせの品種でもありますがそれでも一度も途切れることなく栽培され続けてきた背景には、「雄町」を誇りに思い、脈々と種をつないで来た地元・岡山の酒造会社や生産者らさまざまな人たちの努力と功績があったのです。その中でも赤磐郡軽部村長の加賀美章氏が行った宣伝活動や利守酒造による雄町復活栽培への取り組みは非常に大きな功績となっています。

利守酒造が考える地酒とは、地元の米と水で作る酒のこと。また、その酒を備前焼の容器で熟成させる。このこのような考えに行きつくには山本博先生とのブルゴーニュ視察の経験が大きかったそうです。


備前焼の大きな壺が並んでいました。

【テイスティングアイテム】
手作り純米大吟醸 赤磐雄町ゴールド
手作り純米大吟醸 赤磐雄町
山廃純米吟醸 酒一筋 時代おくれ
酒一筋 備前焼ボトル
酒一筋1998

お燗で温度の変化による風味や味わいの変化も確認しました。

テイスティング後、蔵の近くの真砂土の自社田を視察。
田んぼでの仕事の他に、相続について、田んぼの値段についてなど現実的な意見交換もありました。

利守酒造 Kura Master 日本酒コンクール受賞酒


Kura Master受賞作の賞状を持って記念撮影

今回の視察旅行も残すところあとわずかとなりました。焼酎や日本酒の製造や原料の栽培などについてたくさんの学びがありましたが、このKura Master研修旅行では審査員の皆さんに日本の文化、特にその土地に根差した歴史や文化、伝統工芸を肌で触れ、感じてもらうことがとても重要だと考えています。
今回は特に岡山の伝統工芸、備前焼きと日本刀鍛錬の場を訪問することができました。

文化体験 ‐備前焼‐

備前焼体験を通し、なぜこの地でこの工芸が生まれたのか、備前焼の器で日本酒を飲むとなぜ美味しいのか、などを感じ取ることができました。
備前焼は釉薬を一切使わず、昼夜問わず松割木で7日から14日間もの間釜を炊き続けるため、炎や灰の流れによって自然な風合いが生まれ、2つとして同じものがありません。また、稲の穂を巻いて柄をつけたものも2017年に日本遺産に登録された、約千年の歴史を持つ伝統工芸です。
備前焼の土はきめが細かく、気孔があるため通気性がよく水や食物を新鮮に保つことができます。この通気性によって花瓶の花は長持ちし、酒は味がまろやかになると言われています。

備前焼に使われる土は伊部地区の地下から採掘されます。山から流れ出たものでとてもきめ細かく、粘り気があり鉄分を含んでいるそうです。また、採掘した土は数年寝かせてから使用します。
審査員からは土づくりのために不純物などを除去する方法など質問があり、手作業で行われるこの工程がとても大切だということを学びました。

赤松の割木を使って釜の温度を約2週間かけて1時間に15℃上げ、1250℃まで上げていきます。釜が炊き上がったら自然に1週間から10日かけてゆっくりと冷まします。
土づくりから成形まですべて手作業で行うため、鎌滝は年に1回から2回程度しかできないそうです。

今回、ロクロで成形する作業を体験しました。皆、思い思いの形の作品を作り、窯元で焼いていただきます。焼きあがった作品がフランスに届く日が待ち遠しいです。

文化体験 ‐日本刀鍛錬‐

最後に、川島一城さんの備前日本刀の鍛錬場を訪問しました。

備前は、砂鉄の産地である中国山地や美作から吉井川の水運によって豊富な原料が持ち込まれて多くの刀匠が居住していたことで知られています。その刀匠たちが備前刀の基礎を確立し、備前の国を高い技術水準と多大な生産量を誇る刀剣王国に築き上げた歴史があります。

ここで見学した鍛錬とは、折り返し鍛錬を行う工程です。この工程の目的は、鋼を何度も折り返して鍛えることにより粘りを持たせて強度を増し、不純物をたたき出し、炭素量を平均化させることです。刀匠だけではできない作業なので向こう鎚とともに作業を行いますが、川島さんは自動の機械を使用して一人で静かに鍛錬をされています。

川島さんがいつも使っているという小さな刃物を水の上でかざす前と後で水の味わいが変わるということを身をもって体験しました。
ここで体験した静けさ、火の音を聞き取る集中力が日本の心と結びつく。このことが川島さんが私たちに伝えたかったとおっしゃっていたこと。少しでもこの日本の伝統、空気が審査員の心に響き、この研修旅行で体験した感動を今後フランスで活かし、伝えていって欲しいと願っています。

2025年1月Kura Master研修ツアー参加者一覧

Christophe DAVOINE

Christophe DAVOINE(クリストフ・ダヴォワンヌ)

Kura Master 本格焼酎・泡盛部⾨ 審査委員⻑。 フランスバーマン協会 副会⻑。
2015年 M.O.F.(国家最優秀職⼈章)バーマン サントリー ブランドアンバサダー

Sara MOUDOULAUD

Sarah MOUDOULAUD(サラ・ムードゥロー)

Bar Nouveauオーナー兼バーマン Bespokeというバー・レストランで働いた後、 little red doorで 当時シェフ・バーマンだったRémy Sauvageの元でバーマンとして 経験を積み、ロンドンのホテルLanghamのバーArtesianでも活躍。 2023年 Le syndicat勤務、その後 Hadrien Moudoulaud、Rémy Savage、Marc Puzzuoliらと共に、 パリのバー、Bar Nouveauのオープニングに携わった。

Romain de COURCY

Romain DE COURCY(ロメン・ド・クールシー)

5つ星ホテル リッツのバー・ディレクター
Quentin LOISEL / クエンティン・ロワゼル エッフェル塔内にあるミシュラン2つ星レストラン ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne)シェフソムリエ 酒ソムリエでもある。

Quentin LOISEL

Quentin LOISEL(クエンティン・ロワゼル)

エッフェル塔内にあるミシュラン2つ星レストラン ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne)シェフソムリエを務めた。
酒ソムリエでもある。

Dominique PERETTI

Dominique PERETTI(ドミニク・ペレッティ)

ローザンヌにあるピック・グループのミシュラン2つ星レストラン ボー・リヴァージュ・パレス(Beau-Rivage Palace)シェフソムリエ コルシカ島のAjaccio出⾝でグランド・ホテル・ド・カラ・ ロッサで研修を受け、2021年にValenceのピック・ グループにアシスタント・シェフ・ソムリエとして加わった。

Agnese MORANDI

Agnese MORANDI(アニェーゼ・モランディ)

ミシュラン2つ星レストラン ターブル・ブリュノ・ヴェルジュ(Table – Bruno Verjus)ソムリエ イタリアでミシュラン3つ星レストランPiazza Duomo で3年働いた後 3つ星レストラン Maison Pic にて研修。 その後Megeve の La Dame de Pic 1920 、 パリの2つ星レストラン Clarence でも働いた。 Identita Golose 2024 ベストソムリエ獲得

Laetitia MARTIN

Laetitia MARTIN(レティティア・マルタン)

パリ・アルベール・ド・マン⾼校(Lycée Albert de mun Paris) ソムリエ講師

 


 


後援

Ambassade du Japon en France 在仏日本国大使館

Association des Sommeliers de Paris Ile-de-France

CLAIR

JETRO Paris

日本政府観光局(JNTO) - Japan National Tourism Organization

ダイヤモンドスポンサー

一般社団法人awa酒協会

岐阜県酒造組合連合会

Maison Richard

Le vin en tête

長期熟成酒研究会

佐賀県