審査会
2023年より続く梅酒コンクールに柑橘酒部門が新設され、名前を変えて新たな一歩を踏み出したKura Masterリキュールコンクールが、2026年4月27日(月)、パリ市内の「パヴィヨン・ルドワイヤン」にて開催されました。


審査員には、リキュールコンクール審査委員長を務める、オート・サヴォワ地方のタロワールにあるAuberge du Père Bise のミシュラン2つ星レストランのシェフ・ソムリエのマエヴァ・ルージュオレイユ氏をはじめ、MOFソムリエ(国家最優秀職人章)受章者や、リッツ・パリ、シュヴァル・ブラン・パリ、マンダリン オリエンタルなどの五つ星ホテル、さらにはミシュラン三つ星レストランで活躍するトップソムリエら総勢125名が参加しました。今回は「梅酒部門」と「柑橘酒部門」での開催となりました。



審査は1テーブル7〜8本のお酒を11セッション(1セッション 約30分)で行われました。それぞれ決戦に通過した5点の中から優秀賞3点 そして最優秀賞である審査員賞1点が選ばれました。さらに審査委員長であるマエヴァ・ルージュオレイユによって選ばれるプレジデント賞が審査員賞の中から1銘酒決定されました。

リキュールコンクール審査委員長のマエヴァ・ルージュオレイユ氏は今回の審査会について以下のようにコメントしています。
「Kura Masterの記念すべき第10回大会において、新たに誕生した梅酒部門と柑橘酒部門からなるリキュールコンクールの審査委員長を務めるという大変な光栄をいただきました。この第10回大会は、リキュールカテゴリーが導入されたことで、コンクールにとっても非常に大きな意味を持つ年となりました。梅酒は長年親しまれてきたものですが、今回はより甘みのある領域として明確に位置づけられ、さらに多様な柑橘酒が加わったことは非常に興味深い試みでした。審査では、受賞した柚子酒以外にも、日本固有のさまざまな柑橘が多様なスタイルで表現されており、その品質の高さと幅広さに強い刺激を受けました。また、紫蘇や植物を用いたリキュールなど、日本の造り手の皆さまによる新しい発見の始まりを予感させる素晴らしいものばかりでした。Kura Masterは回を重ねるごとに、日本酒から始まったその歩みを広げ、今では日本の造り手の多様な魅力を私たちに教えてくれます。これらは、私たちのレストランの食卓においても新たな可能性をもたらしてくれるものです。記念すべきこの初年度に立ち会えたことを心より嬉しく思うとともに、来年また皆さまと共にさらなる発見を分かち合えることを今からとても楽しみにしています。ありがとうございました。」
マスタークラス
審査会後には、マスタークラスが開催されました。鈴木秀生 在フランス日本国特命全権大使による開会のご挨拶とともに、パリの美食文化と日本酒が響き合う華やかなひとときが幕を開けました。

「まず初めに、グザビエ・チュイザKura Master日本酒審査員長、宮川圭一郎運営委員長、審査委員長・審査員の皆様、ご来場の皆様、10周年を迎えたKura Masterコンクールに心からの祝辞を申し上げます。このコンクールは、ここにおられる全ての皆様の情熱と創造性により、発展してきました。皆様のご尽力に心から敬意を表します。
なぜ我々は、ワインや日本酒、本格焼酎・泡盛、リキュール(梅酒・柑橘酒)等にこれほど情熱を注ぐのか。フランスでも日本でも同様に、その背景には、伝統を引き継ぎ、テロワールや水といった地元の特産を生かしながら紡いできた文化があります。その文化が、人間と自然との「マリアージュ」を生み出し、日本酒やワインを非凡にする本質となり、国の誇りとなっています。
そして、フランスと日本、二つの伝統的な文化のマリアージュもまた、更なる可能性を秘めています。フランスと日本の料理・酒のマリアージュは、我々がまだ気づいていなかった新たな魅力の発見、そして、深化に繋がります。今年、特別審査員としてお迎えしたシェフのヤニック・アレノ氏によるマリアージュのご提案は、その可能性を実感できる、素晴らしい機会です。
日本政府は、日本産酒類に携わる全ての皆様の努力の結晶が、フランス・ヨーロッパ・世界に広く認知され、日本産酒類が更に普及していくよう、引き続き輸出拡大に尽力していく所存です。Kura Masterコンクールにおける、第一線で活躍する審査員の方々による評価はまさに、世界中に日本産酒類を広める強力な後押しとなります。
本日は誠にありがとうございました。」

その後、ヤニック・アレノ氏が登壇し、日本での経験や日本料理への敬意、日本酒とフランス料理の未来について語りました。アレノ氏は、日本を訪れた際の思い出や酒蔵との交流を振り返りながら、日本酒が持つ繊細な旨味やテロワールの表現力に触れ、フランス料理との高い親和性を紹介。さらに、白ワインに代わる存在として日本酒を料理やソースに取り入れる可能性についても言及し、日本酒がフランスのガストロノミーに新たな創造性をもたらす存在であると語りました。

会場では3種の山田錦をテーマにした日本酒と料理のマリアージュも披露されました。蟹のタルトレットとトマトウォーターのエスプーマ仕立ての一皿に「HYAKU MOKU Alt.3」、ギルヴィネック産小魚のポシェ ソース・ヴェール・プレに「The Gate」、そして巻き貝のココット仕立て フォアグラ風味のモダンマヨネーズとカレーの香りを添えた一皿にフランスで醸造されている「Le Vent」を合わせるなど、日本酒とフランス料理が織りなす繊細なペアリングが来場者を魅了しました。


また、兵庫県が誇る酒米「山田錦」をテーマにした特別セミナーも開催されました。山田錦は今年で90周年、Kura Masterは10周年となり、かけて100年になります。セミナーでは、兵庫県立農林水産技術総合センター淡路農業技術センター 所長 杉本琢真氏や、特A地区・加東市で山田錦を栽培する平川 嘉一郎氏が登壇し、山田錦の系統管理や気候変動への対応、生産者と酒蔵を結ぶ取り組みなどについて紹介。世界最高峰の酒米と称される山田錦の品質を支える、兵庫県ならではの風土と技術への理解を深める内容となりました。

マスタークラスの締めくくりには、加納雄大 ユネスコ日本政府代表部 特命全権大使より閉会のご挨拶が述べられました。
「Kura Masterマスタークラス審査会に参加させて頂くのも、今回で3回目となります。今回は、フランス美食界を代表する偉大なシェフ、ヤニック・アレノ氏ともに、素晴らしい会場で参加することができ、大変光栄に存じます。2023年の末にパリに着任以来、審査員長のグザヴィエ・チュイザ氏をはじめとするKura Masterの方々と様々な機会にご一緒させて頂く中で、私自身、日本酒の奥深さについて多くを学ばせて頂きました。私の先輩の元ユネスコ日本大使で、Kura Master名誉会長でもある門司健次郎大使が、その著書で日本酒とフランスの食文化との融合の可能性を記されていますが、本日のフランスの美食と山田錦のマリアージュは、まさにそれを再認識させるものでした。皆様ご存知の通り、2024年末には、日本が誇る伝統的な酒造りがユネスコ無形文化遺産に登録されました。先人たちが培ってきた技と知恵、そして自然への畏敬の念が結晶となった、かけがえのない文化遺産が国際的に認められた証といえます。私たち日本人にとって大きな喜びであると共に、次世代へと継承していくべき重責を感じております。日本に「神の雫」という、フランスワインをテーマにした人気漫画がありますが、日本酒はまさに私たち日本人にとっての「神の雫」であり、皆様と共に楽しみつつ、その魅力を世界に向けて紹介していく所存です。本日の素晴らしい機会を提供してくださったKura Master運営委員会の皆様に、改めて心より感謝申し上げます。Kura Masterが、日本とフランス、ひいては世界各国の文化交流の架け橋として、今後も重要な役割を担われることを期待しております。本日ご参加の皆様、そしてこの素晴らしいイベントを支えてくださったすべての関係者の皆様に、心からの感謝と敬意を表し、私の閉会の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。」

審査会翌日には、一般来場者向けの試飲会がパリ国際大学都市日本館にて開催されました。会場には約200名の来場者や関係者が集まり、日本酒への高い関心とともに終始活気に包まれました。多くの交流と発見に彩られた試飲会をもって、第10回Kura Masterは盛況のうちに幕を閉じました。



