クラマスター参加酒蔵、協賛企業、後援企業、その他関係者の皆様、
12月(4日又は5日)、(パラグアイ現地時間4日)、ユネスコの無形文化遺産保護条約政府間委員会は、「伝統的酒造り」を人類の無形文化遺産の代表一覧表に記載(通称は「登録」)することを決定しました。正式タイトルは、「日本におけるこうじ菌を使った酒造りの伝統的な知識と技術」。対象は、「杜氏や蔵人がこうじ菌を用い、日本各地の気候風土に合わせて、経験に基づき築き上げてきた、伝統的な酒造り技術(日本酒、焼酎、泡盛等を造る)」です。
私は、2013年、ユネスコ日本大使として、和食の無形文化遺産登録の歴史的瞬間に立ち会い、その直後から次は日本酒の番だと訴え続けてきました。このことは、名誉会長に就任した2021年のクラマスター授賞式を始め、その後の授賞式の挨拶でも述べてきました。11年もかかりましたが、登録が実現したことを皆さんと心よりお祝いしたいと思います。
私は、登録の意義は次の点にあると考えます。
第1は、登録により、日本の伝統的な酒類は、単なるアルコール飲料ではなく、日本の文化であると広く内外に宣言されることです。
第2は、登録は、日本酒の存在を多くの日本人に再認識させることです。日本国内での日本酒の低迷の理由は、かつての「悪評からの飲まず嫌い」ではなく、日本酒が日本の社会生活の中で存在感を失ってしまったことにあると考えるようになりました。今や全47都道府県に日本酒の蔵があります。登録が話題になることにより、人々が地元の酒蔵に目を向けるようになることを期待します。
第3は、登録は、伸びつつある日本酒の海外市場での強い後押しとなることです。和食の登録が更なる和食ブームにつながったことを思い出します。
そして、今回の登録とクラマスターとの繋がりについても触れたいと思います。
ユネスコ本部はパリにあります。クラマスター事務所やオテル・ド・クリヨンからはセーヌ川を挟んで僅か3Kmほどの距離です。
日本酒が和食に合うことは当然ですが、クラマスターはフランス料理に合う日本酒を選ぶコンクールです。そしてフランス料理は2010年に、また、和食は2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されています。そして今回、これら2つの無形文化遺産の料理に合う日本の酒類(日本酒、焼酎、泡盛)も無形文化遺産の仲間入りをしたのです。
前述の登録の意義の2番目で、「登録は和食の日本酒の存在を日本人に再認識させる」ことに触れました。クラマスターの重要な意義の1つは、日本酒が和食以外の料理にも合うことを認識させることです。日本人は、世界中のあらゆる料理を食べる一方で、「日本酒には和食」との強い思い込みを有しています。普段、家でも食べている和食以外の人気料理に日本酒を合わせようと思う人は殆どいません。しかし、クラマスターがフランス料理と日本の酒類の相性の良さを伝えてくれれば、日本酒を合わせる料理の幅が広がり、日本国内での消費拡大につながるのではないかと思います。
今回の登録を踏まえ、如何に日本の酒類の魅力を伝えていくかが重要です。クラマスターが、「國酒」としての日本の酒類の復権と、これらが「世界酒」になることを目指し、皆様の引き続いてのご協力を得て、その活動を更に充実させていくことを期待します。
Kura Master 名誉会長
門司 健次郎
(元ユネスコ日本大使・酒サムライ)